あのひのクジラ|作品紹介
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あのひのクジラ|実際に読んだ感想とレビュー
少年と子クジラの出会いが心に残る感動の物語
『あのひのクジラ』は少年ノイくんと一頭の子クジラが出会い、クジラの世話をする優しい物語です。
主人公のノイくんはお父さんと猫と一緒に海辺の家で暮らしています。お父さんは漁に出る仕事をしているため毎日忙しく、家を空けることが多くあります。
なのでノイくんはいつも一人。広い海を眺めながらどこか寂しい毎日を過ごしています。
そんなある日、浜辺で遊んでいたノイくんは一頭の子クジラが砂浜に打ち上げられているのを発見します。
「助けなきゃ!」
そう思ったノイくんは、なんと子クジラを家まで運び自宅の浴槽に入れて世話を始めます。子どもらしいまっすぐな優しさです。困っているから助けたい。ただ、それだけ。
お父さんが帰宅すればすぐに見つかってしまいます。普通なら、「なんでクジラがお風呂におるんや!」となりそうですが、お父さんは頭ごなしに叱りません。
ノイくんが子クジラを助けた理由。そして、自分が仕事ばかりで寂しい思いをさせていたこと。それらを理解したお父さんは、ノイくんの気持ちを受け止めます。
しかし、だからといって家で飼えるわけではありません。クジラは海で生きる生き物。本当にクジラのことを思うなら、海へ返してあげることが大切なんだと、優しく教えます。
そして親子で子クジラを海へ帰すことになります。別れは寂しい。それでも、相手の幸せを願って送り出す。この場面はとても温かく描かれていて、親子の距離も少し近づいたように感じられます。
その後、ノイくんは「またいつか会えるかな。」そんな思いを胸に毎日を過ごします。
そして物語の最後には、海を泳ぐクジラの親子の姿が描かれます。あの子クジラは元気に大きくなったのかな。そんな想像をさせてくれる、余韻のある締めくくりです。
物語全体としては、とても優しくて素敵なお話でした。子どもらしい純粋な優しさ。親が子どもの気持ちを受け止めること。そして、本当に相手のことを思うとはどういうことなのか。
そんなことを自然と教えてくれる絵本です。
・・・ただ。
どうしても大人になるとツッコミたくなる(笑)達也くんのイメージとしては「捨て猫を拾ってきて、お父さんに内緒で育てる。」あの定番の物語のクジラ版?!
でも相手はクジラでネコじゃない。まず、家まで運べるのがすごい。どれくらい小さな子クジラなのか分かりませんが、それでもクジラ。しかも浴槽で飼育。
いやいやいや(笑)
浴槽のサイズが足りませんよ?海水はどうするの?餌は何を食べるの?水質管理は、酸素は・・・。
などと考え始めると、一気に現実へ引き戻されます。それでもノイくんは「助けたい!」という一心で浴槽まで運んでしまう。達也くんからするとその行動力は本当にすごい。
普通の子なら大人を呼びに行きそうですが、ノイくんはまず自分で助けようとする。その発想力と実行力、なかなかぶっ飛んでいます(笑)
もちろん現実ではクジラを浴槽で育てることはできません。だからこそ、これは現実のお話というより「子どもの優しさ」を象徴した物語として読むのが一番なのだと思います。
『あのひのクジラ』は命を思いやる気持ちや親子の絆を優しく描いた、心温まる一冊です。

大人になるとね、色々穢れていくんだよ

ぼくはぴゅあだよ!
達也の深読み!
ノイくんが子クジラを発見したとき、大人を呼びに行かずに「自分で抱えて家に持ち帰る」という超ハードな選択をしたのはなぜでしょうか。
もちろん「今すぐ助けなきゃ」という純粋な優しさもありますが、それ以上に彼が「圧倒的な孤独」の中にいたからではないかと思います。お父さんは毎日、朝から晩まで漁に出ていて家にはいない。広大な海を前に、毎日ぽつんと一人で過ごしていたノイくんにとって、浜辺に打ち上げられていた子クジラは「自分と同じ、世界に取り残された迷子」のように見えたのかもしれません。
誰かに頼るという発想すら浮かばないほど孤独だったノイくんが、「この子は僕が守るんだ」と必死に浴槽へ水を運ぶ姿は、健気であると同時に、大人の胸を少し締め付けるものがあります。
公園でよくスマホをずーっと触っていたり井戸端会議に夢中になったりして自分の子どもの事を見ていない父親や母親がいますが、その子たちも「ねぇ…遊んでよ」と遊び相手を探していたりします。親は気付けません。孤独って子どもを孤立させるんです。これ実話で達也くんが公園で見知らぬ子から悲しそうに声をかけられた事があります。「僕も一緒に遊んで欲しい」『お母さんかお父さんは?』「あそこにいるけどずっとスマホ触ってる」





