ねずみのとうさんアナトール|作品紹介
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ねずみのとうさんアナトール|実際に読んだ感想とレビュー
誇りを取り戻したネズミとチーズ工場の物語
『ねずみのとうさんアナトール』は、人間が普通に暮らしている社会のすぐそばに、ねずみたちの世界も存在しているような物語です。
ねずみたちも家族と暮らし、人間のように生活している。しかし、ねずみが生きていくためには人間社会に入り込み、食べ物を拝借しなければなりません。
主人公のアナトールもそんな暮らしをしている一匹のねずみ。
ある日、アナトールは食べ物を求めて人間の家に忍び込みます。そこで偶然、人間たちの会話を耳にしてしまいます。台所に忍び込んで食べ物をあさる。生ごみをあさる。ねずみの足は汚い。人間から見ればねずみは迷惑な存在。
その言葉を聞いたアナトールは大きなショックを受けます。自分たちは、人間からそんなふうに思われていたのか・・・。そこでアナトールは考えます。
ただ人間から食べ物をもらうだけではなく、自分たちにも何かできることはないだろうか。そして思いついたのが、チーズ工場でした。
アナトールは工場にあるチーズを味見して「これはおいしい」「これはもう少しこうしたほうがいい」と、率直な感想を書き残していきます。
さすが、ねずみ。チーズのプロフェッショナル?!
その評価を見つけた工場の社長は、最初こそ誰が書いたのかわかりません。しかし、書かれている内容を参考にチーズを改良してみると商品の評判が良くなり、工場は大繁盛するようになります。
アナトールの味覚が、チーズ工場を救ったわけです。ところが社長には誰がアドバイスをしてくれているのかわかりません。そこで謎の協力者であるアナトールに向けて、お礼の手紙を残します。
それを読んだアナトールは大喜び。人間から嫌われていると思っていた自分でも、誰かの役に立つことができた。
自分の能力を認めてもらうことができた。これはアナトールにとってとても大きな出来事だったのでしょう。話としては、ごりっぱです。
誰かから悪く言われて落ち込んだとしても、それだけで自分の価値がなくなるわけではありません。
自分にできることを考え、自分の得意なことを生かせば、誰かの役に立てるかもしれない。アナトールの場合はチーズを見極める能力だったわけです。
ただ食べ物を拝借する存在から、チーズ工場にとって欠かせない存在へ。自分の得意なことを生かして誇りを取り戻していくという、なかなか深い物語です。
・・・ただ。
大人になってしまった私は思う。そもそも食品工場にネズミが出入りして大丈夫なのか!?チーズを味見して感想を書いてくれるのはありがたい。ありがたいんですが、ネズミです。衛生管理的には大事件。
「謎の天才チーズ評論家のおかげで売り上げが伸びました!」と喜んでいたら、その正体が毎晩工場に侵入しているネズミだった。現実なら社長の顔から笑顔が消える案件でしょう(笑)保健所案件になりかねません。
物語として読めば、「自分の力で人の役に立つ」「自分にも価値があることを知る」という、とても素敵なお話です。しかし現実的に考え始めると、「食品工場にネズミは不衛生」となってしまう。
こういう大人になってはいけないってことだね!!!子どもにはアナトールの勇気と誇りを。大人には、物語を素直に楽しむ心を。いろいろな意味で考えさせられる一冊でした( *´艸`)

衛生基準に引っ掛かるぞ~

そもそもねずみとにんげんっておいしいってきもちはいっしょなの?
達也の深読み!
このお話、単なる「めでたしめでたし」の絵本に見えて「労働の喜びと人間の尊厳(ねずみだけど)」を真っ正面から描いた、ものすごく深い社会派ストーリーです。
最初アナトールたちは人間に隠れて食べ物を「拝借」していました。人間からすればそれは「ただの泥棒(害獣)」です。その事実を知ったアナトールが傷ついたのは、お腹が満たされていても「自分は社会の役に立っていない、ただの嫌われ者だ」という自尊心の欠如に気づいてしまったから。
そこで彼が選んだのは、「食べ物を盗むのをやめる」ことではなく、**「自分のスキル(チーズの目利き)を提供し、その対価として食べ物(とリスペクト)を受け取る」**という、対等なビジネスパートナーになる道でした。
「ただもらうだけでは、心は満たされない。自分の力で誰かを幸せにし、その対価を得てこそ、本当の誇り(プライド)が生まれるんだ」という、働くことの本質を教えてくれる名作です。





